江本 裕 著 『西鶴研究―小説篇―』 平成17年7月11日,新典社発行 A5判,350頁,10080円 目 次 序 章――延宝期の俳諧と咄本――…………………………………………………………………… 9 はじめに/名所記の中の俳諧―『京童』と『京童跡追』―/『吉野山独案内』につ いて/延宝期の名所記/「句引」のある名所記(一)―『有馬私雨』と『有馬名所鑑』―/ 「句引」のある名所記(二)―『河内鑑名所記』/延宝期の咄本―西鶴との距離―/「軽口」 の手法と西鶴/おわりに 第一章 西鶴諸国はなし 一 『西鶴諸国はなし』における説話的発想………………………………………………… 41 はじめに/説話文学の基盤/西鶴の説話的発想/名所記・怪異談と『西鶴諸国はなし』 /おわりに 二 『西鶴諸国はなし』と『懐硯』…………………………………………………………… 61 「大下馬」の意味する処/『西鶴諸国はなし』の方法/当世化の持つ意味/『懐硯』の形式 /『懐硯』と前後の作品 三 『西鶴諸国はなし』と伝承………………………………………………………………… 74 「驚は三十七度」の素材/「八畳敷の蓮の葉」など/伝承からの飛翔/西鶴の方法 四 『西鶴諸国はなし』雑考…………………………………………………………………… 89 ――京観世竹村甚左衛門のこと―― 京観世竹村甚左衛門と上野忠親/『翁草』の一条/甚左衛門の師系/貴志喜太夫との関係 /竹村甚左衛門と上野忠親 第二章 好色の世界 一 『好色一代男』私論…………………………………………………………………… 107 ――親鸞伝と寓言と―― はじめに/「一夜の枕物ぐるひ」――大原の雑居寝考――/「髪きりても捨られぬ世」―― 六角堂考――/「集札は五匁の外」――こなたは日本の地に居ぬ人じや考――/『好色一代 男』の成立――「寓言」考――/おわりに 二 『諸艶大鑑』私論…………………………………………………………………… 131 ――「慰草」の持つ意味―― はじめに/『諸艶大鑑』の内容/廓外への眼/遊女の内情・境遇/世態への傾斜/「慰草」 の持つ意味/おわりに 三 『諸艶大鑑』における挿絵…………………………………………………………… 153 ――首尾二章を中心に―― はじめに/首章の挿絵/最終章の挿絵/「大臣北国落」の謎/おわりに 四 『好色五人女』論…………………………………………………………………… 173 ――浄瑠璃との関わりを中心として―― はじめに/類似の手法/類似の傾向/『好色五人女』の基盤/おわりに 五 『好色一代女』私論………………………………………………………………… 191 はじめに/『好色一代女』の構成と遊女時代の特徴/奉公期の一代女/奉公期一代女の 年齢と「時勢に語る」私見/私娼期の一代女と「小作りなる女の徳」/惣嫁としての一代女/ おわりに 六 『好色一代女』と風俗書…………………………………………………………… 211 はじめに/『都風俗鑑』と『一代女』/『好色貝合』と『一代女』/『好色通変歌占』と 『一代女』・『好色貝合』/おわりに 第三章 貞享後期の西鶴 ――『本朝二十不孝』と西鶴武家物―― 一 『本朝二十不孝』…………………………………………………………………… 227 ――方法の破綻について―― 『本朝二十不孝』の序文/『二十不孝』の描く悪/『二十不孝』における教訓/『二十不孝』 における方法上の破綻/おわりに 二 西鶴武家物考………………………………………………………………………… 239 ――『武道伝来記』と『武家義理物語』との意識をめぐって―― はじめに/『武道伝来記』の世界/その『諸国はなし』的性格/『武家義理物語』の内実/ おわりに 第四章 晩年の西鶴 一 『世間胸算用』私論………………………………………………………………… 261 ――咄の方法の完成―― はじめに/ハナシ、弁舌/『杉楊枝』と「長刀はむかしの鞘」/『胸算用』のハナシ性/ 『世間胸算用』の特質/おわりに 二 『世間胸算用』への一視点………………………………………………………… 280 ――非胸算用的世界―― はじめに/『胸算用』の中の非胸算用的な作品群/「人心(人の心)」を含む章/『胸算用』 における処世訓/おわりに 三 『西鶴置土産』…………………………………………………………………… 291 ――回想の文学論―― はじめに/「西鶴筆」の箇所の問題点/甲類筆の問題点/編者北條団水への疑問/『置土産』 の創作意図/おわりに 参考文献一覧……………………………………………………………………… 313 あとがき…………………………………………………………………………… 329 索 引…………………………………………………………………………… 350 あとがき 新典社にこの原稿をお渡ししたのは昨年の九月末だったように記憶している。十月の後半から 十一月の中旬にかけて二度にわたって軽度の脳梗塞に罹り、二度の入院を体験して退院したのが 十二月八日、帰宅すると初校が届いていた。すぐに校正にとりかかることもできず、その前に約 束していた仕事も残っていて、あれやこれやで遅れに遅れ、当初は三月末には刊行の予定であっ たのが、漸く初校返しで三月末となった。新典社にも随分ご迷惑をかけることになって、大変遺 憾に思っている。 とりあえず本書に収める諸稿の初出誌等の一覧を示すと、以下の通りとなる。 〔省 略〕 以上のごとくであるが、収録稿すべてにおいて、補筆・加筆、また増補を行っている。むろん 各稿論旨に変更はなく、主旨は全稿貫いているつもりでいるが、本書の各稿が決定稿であると 受け取ってほしい。初期に書かれた何篇かは現在すでに常識化されていて、収めるのにやや躊 躇したが、あえて入れることにした。特に「『西鶴諸国はなし』における説話的発想」は、昭和 三十年代(厳密には昭和三六年度)に、恩師暉峻康隆先生に「西鶴の説話的発想」という副題で 修士論文を提出した際の骨子であるが、当時西鶴を説話面から論ずるにはいささか憚る処があ り、今から見れば甚だ稚拙ながら、説話とは、説話文学とは何ぞやという、概念規定から始め なければならなかった、その体験を筆者自身を含めて銘しておきたかったからである。そして、 今般本書に収録した論稿の過半は、この稿をなすために積み上げた諸々の作業や思念が原点と なっているような気がしている。 本書は『西鶴研究――小説篇――』と題するが、このあと『西鶴研究――俳諧篇――』を予定 している。残るは自身の体調の問題のみ。谷脇理史・雲英末雄氏をはじめ、多くの先輩・同輩 ・後輩に奨められてここまでたどりついたが、あと、精進して努力するつもりでいる。末筆な がら、新典社松本輝茂社長には早く出版を快諾されたにもかかわらず、大変なご迷惑をおかけ してしまった。直接編集に充たられた岡本学実氏にもお世話になった。ともども深甚の謝意を 表する次第である。 平成十七年六月二十日 江本 裕 記