『続 和本入門 江戸の本屋と本づくり』
     橋口侯之介 著

            
          2007年10月15日日・平凡社 発行
           B6判、270頁、定価2200円+税


目 次

 まえがき 3
古本屋の仕事から芽生えたものは 3/日本人の書物観を問う 6/本とは
「人の行為」である 7

第一章 和本はめぐる――復元、江戸の古本屋 17

「古本売買」本屋の店先 17/本屋と客の応対 21/古書をいくらで買い
とったか 26/古本として再流通した本はすぐわかる 31/古本は市場で
売買する 33/古本市場の歴史がわかってきた 36/現代と同じ市場の手
数料 40/フリ市という方法 42/古本屋の用語で解く 44

第二章 本を「つくる」心情――私家版の世界から 49

江戸時代の書物像 49/和本とは幅の広い概念である 53/私家版とは何
か 55/『北越雪譜』の出版経緯 57/三分の一は私家版だった 60/
どんな本が私家版か 64/私家版はどのようにつくるのか 66/国学や洋
学に見る私家版事情 69/本屋と私家版の関係 72/私家版か町医かの見
分けかた 76/活字印刷の私家版 78

第三章 本ができるまで――原価の秘密にせまる 83

本の値段を知るための基礎知識 83/江戸時代書物の平均価格 87/安か
った大衆本の値段 90/本づくりの工程 93/板木職人の仕事 98/製
作原価の基礎は板木代 102/高かった紙代 104/仕立屋へ払う製本代
 107/製作諸雑費と稿料 110/発行前の本屋の判断 114/江戸時
 代の原価計算 117/原価負担を軽くする工夫 122/ここに秘密、板
 木の売買で利益 125/本に命を吹き込むおまじない 130

第四章 本屋は仲間で売る――本を広めた原動力 133

和本を見る眼 133/本屋を知るための基本文献 136/本屋は仲間をつ
くる 139/享保改革と本屋仲間の発足 142/草紙屋の仲間結成 14
4/本屋仲間の仕組み 146/本屋仲間の解散と再興 149/重板と再板
は大違い――本屋の用語 152/行事は忙しい 155/類板とは何か――
吉野屋為八の事例 159/板木の譲渡と板株の移動 164/板木の持ち合
い=相板 169

第五章 写本も売り物だった――手書きでも大きな影響力 173

現代に残る写本の多さ 173/国書のデータベースを調査してみたら 17
6/写本を処分した中国 178/ヨーロッパの写本事情 180/日本にお
ける写本の終焉 182/写本の豊かな広がり 183/写本をつくる専門の
書本屋 186/学者の写本も売り物だった 188/新井白石に見る写本 
191/写本の影響力は大きかった 192/貸本屋は写本も貸した 196
/写本づくりの流儀 199/写本の調べかた 201

第六章	書物は読者が育てる――本を読むことの意味 207

書物は原作者と読者を結ぶ 207/身分差をなくした読者の集団 211/
本屋が蔵書家を支える 213/句読点のない原典 217/さまざまな句読
点 221/書物は書き入れで成長する 224/注を入れることで本を育て
る 226/書き入れは第二の本づくり 231

第七章 統計で見る江戸時代の和本――書物はどう広がったのか 237

和本を調べるデータベース 237/統計をとるための問題点 240/ミク
ロで見た和本の統計 242/ミクロの目、享保十五年 245/ミクロの目
、文化九年 248/ミクロの目、嘉永七年 249/江戸時代の書物を統計
的に推測する 252

あとがき 260

参考文献 262

用語索引 269


あとがき

 本は貯まっていくばかりで、室内はおろか家中にあふれていく。それなのに
、なかなか捨てられない。日本人が書物に対して持つ思い入れの強さには驚く
ばかりである。それは江戸時代のうちにできあがっていった意識だと思われる。
 本書執筆で江戸期の古本屋のことが判明したことは、わたし個人にとっても
大きな収穫だった。これまでよく知られていなかったのである。そのうえ古書
の市場の様子が、現代とそう変わらないことも驚きだった。進歩がないといえ
ばそうともいえるが、むしろその変わらないことのほうにこそ意義がある。そ
こに連綿と続いてきた日本人の書物観があったのだ。和本を見ていると、さま
ざまな疑問が生まれてくる。それが問題意識になっていく。本書はそれを解明
していく道程の一到達点といえる。今後も、いっそう史料を読みこんでいくこ
とで、さらに多くのことを知りたいと思っている。
 前著以来、いくつかの大学から講義を頼まれるようになったが、とくに若い
人たちが和本に新鮮な興味を持ってくれたのがうれしかった。やりがいのある
仕事だと思う。その中でも今回、ぜひ紹介しておきたいのは、イタリア、ヴェ
ネツィア大学のラウラ・モレッティさんのことである。ラウラさんは、仮名草
子をすらすら読むことができる日本文学研究者で、来日の際には熱心に図書館
や古本屋めぐりをされ、わたしの店にもよくお越しになる。そのときにゆっく
り本談義をするのだが、そこには外国からみた新鮮な日本書物論があり、触発
されることが多かった。とくにメンタルな側面から書物をながめることで、和
本の世界がよく理解できるといって、執筆の動機を支持してくださったことが
うれしかった。それを感謝したいのである。ラウラさんはローマにあるサレジ
オ大学マレガ文庫の和本整理も進めておられるが、その仕事がより充実するよ
うにわたしも協力するつもりだ。
 成蹊大学大学院文学研究科の西内友美さんには、さまざまなお手伝いをお願
 いした。なかでも、本書で使用した統計をとる作業にはいっしょになって苦
労した。実物の和本を見ることが、文学研究にとって不可欠なことをよく理解
してくれたと思う。
 平凡社編集部の中島孝二・大澤克行両名と、営業部の牧甫さんにもお世話に
なった。
 なお、本書に挿入した画像は、平成十九年執筆時に誠心堂書店に在庫してい
た本を用いた。いずれ売れることもあるので、いつまでも手元にないことをお
断りしておく。それも古本屋の宿命である。何でもとっておいたら、干上がっ
てしまうので、お赦しいただきたい。
平成十九年十月                    橋口侯之介


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